緩和ケアに役立つ:日中の活動性を穏やかに促すご家庭での音楽活用法
日中の活動性を穏やかに促すために音楽ができること
ご家庭での介護において、日中に活動性が低下し、生活のリズムが崩れてしまうことに悩まれるケースは少なくありません。日中の活動性が保てないと、夜間の不眠や落ち着きのなさにつながることもあり、介護する方、される方双方にとって大きな負担となる可能性があります。
しかし、日中の時間をより活動的に、そして穏やかに過ごすために、音楽が役立つことがあります。音楽は単に聴くだけでなく、私たちの心身に様々な働きかけをすることが知られています。リズムは体を動かすきっかけになったり、メロディーは気分を明るくしたり、馴染みのある曲は意欲を引き出したりする力を持っています。
ここでは、特別な準備は不要で、ご家庭にある身近なものを使って、日中の活動性を穏やかに促すための音楽活用法をご紹介します。
日中の時間帯に合わせた音楽の選び方と活用法
日中の活動性をサポートするためには、時間帯やその時に行いたい活動に合わせて音楽を選ぶことが大切です。
朝・午前中:穏やかな目覚めと活動の始まりに
朝、目覚めてからの時間や午前中は、これから一日を始めるためのエネルギーを養う大切な時間です。ここでは、心身がゆっくりと活動モードに入るような、明るすぎず、しかし心地よい音楽を選ぶのが良いでしょう。
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推奨される音楽:
- ゆったりとしたテンポのクラシック音楽(モーツァルト、バッハの室内楽など)
- 自然音(小鳥のさえずり、穏やかな波の音など)
- 静かでメロディアスなニューエイジ、ヒーリングミュージック
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活用方法:
- 朝食の準備中や、着替えなどの身支度の時間にBGMとして小さく流します。
- 窓を開けて外の空気を感じながら、静かに音楽を聴く時間を設けます。
- 音量は会話の邪魔にならない程度に控えめに設定します。
日中:活動をサポートし、意欲を引き出すために
日中の時間帯は、軽い運動やレクリエーション、趣味活動など、活動的に過ごすことを促したい時間です。ここでは、適度なリズム感があり、聴く人の心に活力を与えるような音楽が適しています。
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推奨される音楽:
- ややテンポの良いクラシック音楽(行進曲や舞曲など)
- 馴染みのある童謡、民謡、歌謡曲(本人の好みによる)
- ジャズやラテン音楽など、心地よいリズムを持つもの
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活用方法:
- 音楽に合わせて手足を動かす、簡単な体操をするなど、身体活動の伴奏として活用します。
- 塗り絵や折り紙など、簡単な手作業をする際にBGMとして流し、集中力や持続力をサポートします。
- 昔のヒット曲などを流し、一緒に口ずさんだり、歌詞を見ながら歌ったりすることを促します。
- 「この曲を聴きながら、ちょっと庭に出てみましょうか」「この曲が終わったら、一緒にタオルを畳みましょう」など、音楽をきっかけに声かけをすると、活動への移行がスムーズになることがあります。
午後・夕方:穏やかに一日を終える準備に
午後から夕方にかけては、活動のペースを緩やかにし、穏やかに過ごす準備を始める時間です。ここでは、高揚感を煽るような音楽は避け、落ち着いた心地よさを感じられる音楽を選びます。
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推奨される音楽:
- 穏やかなテンポのクラシック音楽(弦楽四重奏、ピアノ曲など)
- ヒーリングミュージック、アンビエントミュージック
- 静かでメロディアスなインストゥルメンタル曲
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活用方法:
- お茶の時間や、一日の出来事を振り返る時間にBGMとして流します。
- 静かに座って音楽を聴きながら休息する時間を設けます。
- 夕食の準備や片付けの際に、穏やかな雰囲気を作るために流します。
実践のヒント:ご家庭で無理なく続けるために
- 本人の好みを最優先に: 最も大切なのは、聴く方が好きな音楽を選ぶことです。昔よく聴いていた曲や、思い出のある曲は、気分を明るくし、活動への意欲を引き出す大きな力となります。事前にどのような音楽が好きか、さりげなく尋ねてみるのも良いでしょう。
- 無理強いはしない: 音楽を聴くことや、音楽に合わせて活動することを強制してはいけません。嫌がる様子が見られたら、すぐに中止することが大切です。
- 音量に注意: 大きすぎる音量はかえって負担になります。心地よく聴こえる、少し控えめな音量で流しましょう。
- 環境を整える: 音楽を流す場所の騒音を減らす、椅子に楽に座れるようにするなど、音楽に集中しやすい、あるいは音楽と共にリラックスしやすい環境を整えると効果的です。
- 特別な機材は不要: スマートフォン、タブレット、CDプレイヤー、ラジオなど、ご家庭にある一般的な機器で十分に実践できます。音楽配信サービスの無料プランやYouTubeなども活用できます。
まとめ
ご家庭での緩和ケアにおいて、日中の活動性を穏やかに促すために音楽は有効な手段の一つとなり得ます。朝から晩まで、時間帯や活動内容に合わせて適切な音楽を選ぶことで、生活に心地よいリズムを作り出し、心身の穏やかな活動をサポートすることが期待できます。
ご紹介した方法は、あくまで音楽活用の可能性を示すものです。音楽は医学的な診断や治療に代わるものではありませんが、日々の暮らしの中に穏やかさと活力を取り入れるための一助となることを願っております。ぜひ、ご家庭で無理のない範囲で試してみてください。