音の癒しハンドブック

緩和ケアに役立つ:趣味や好きな活動に穏やかに取り組むご家庭での音楽活用法

Tags: 音楽療法, 緩和ケア, 介護, 趣味, 活動, 集中力, 意欲

趣味や好きな活動に取り組むことの意義

緩和ケアの期間中であっても、趣味や好きな活動に取り組む時間は、その方の生活の質(QOL)を維持・向上させる上で非常に大切です。好きなことに集中する時間は、日々の苦痛や不安から一時的に離れ、心に安らぎや喜びをもたらす可能性があります。また、何かを「する」という行為そのものが、意欲や生きがいにつながることもあります。

しかし、体調の波があったり、気分がすぐれなかったりすると、たとえ好きな活動であっても、なかなか始める気になれなかったり、すぐに疲れてしまったりすることがあります。そのような時、音楽が穏やかなサポート役となる可能性があります。

音楽が活動への一歩を後押しする可能性

音楽には、私たちの気分に働きかけたり、集中力を高めたりする力があると考えられています。特定の音楽を聴くことで、心が落ち着いたり、反対に活力が湧いてきたりすることがあります。

特に、何か活動を始める際に音楽をBGMとして活用することは、以下のような点で役立つ可能性があります。

どのような音楽を選び、どのように活用するか

ご家庭で、ご家族が趣味や好きな活動に取り組む際に音楽を活用するための、具体的な方法をいくつかご紹介します。特別な準備は必要なく、普段お使いの音楽再生機器(スマートフォン、CDプレイヤーなど)で試すことができます。

  1. 活動内容に合わせて音楽を選ぶ:

    • 静かな活動(読書、書き物、編み物など): 穏やかなクラシック音楽(バッハ、モーツァルトなど)、ヒーリングミュージック、環境音楽、自然音(鳥のさえずり、波の音など)がおすすめです。歌詞のないインストゥルメンタルの方が、集中を妨げにくいかもしれません。
    • 少し体を動かす活動(簡単な体操、ストレッチ、園芸など): ゆったりとしたテンポの音楽や、本人が昔から好きだった、聴くと気分が明るくなるような音楽が良いでしょう。ただし、激しすぎる音楽は避け、穏やかなリズムのものを選びます。
    • 絵を描く、物を作るなどの創作活動: 本人の好みを尊重しつつ、集中できると感じる音楽を選びます。特定のジャンルにこだわらず、本人が心地よく感じる音が一番です。
  2. 本人の好みを尊重する:

    • 最も大切なのは、活動するご本人が「心地よい」「邪魔にならない」と感じる音楽を選ぶことです。普段から好きでよく聴いていた音楽があれば、それが最も適している可能性が高いです。
    • どのような音楽が良いか、可能であれば本人に尋ねてみるか、いくつかの種類の音楽を短時間試してみて反応を見るのも良いでしょう。
  3. 音楽の流し方と環境:

    • 活動を始める少し前から流し始める: 活動モードに入るための穏やかなスイッチとなります。
    • 音量は小さめに: BGMとして、会話や活動の邪魔にならない程度の音量で流します。大きすぎるとかえって疲れたり、集中を妨げたりすることがあります。
    • 静かな環境を作る: 可能であれば、音楽以外の騒音(テレビの音、話し声など)が少ない環境で音楽を流すと、より音楽の効果を感じやすくなります。
    • 長時間の音源を用意する: 活動中に音楽が途切れないように、プレイリストを作ったり、長時間再生できる音源を選んだりするとスムーズです。
  4. 柔軟な姿勢で:

    • 音楽を流したからといって、必ず活動に取り組まなければならないわけではありません。音楽はあくまでサポート役です。
    • もし本人が「音楽はいいかな」「今日は聴きたくない」と感じているようであれば、無理に流す必要はありません。体調や気分に合わせて柔軟に対応することが大切です。
    • 活動の途中で疲れてしまったり、集中が続かなくなったりしても、それは自然なことです。音楽を止めて休憩したり、別のことをしたりしても問題ありません。

まとめ

緩和ケアにおける日々の生活の中で、趣味や好きな活動の時間は心身のリフレッシュにつながる大切なひとときです。音楽を穏やかなBGMとして活用することは、その「活動への一歩」を後押しし、集中力をサポートし、心地よい時間を作り出す可能性があります。

ご紹介した方法は、ご家庭で手軽に試せるものばかりです。ご家族のその日の様子や、好きな活動の内容に合わせて、心地よい音楽を選んでみてください。音楽が、ご家族の穏やかな活動の時間と、心豊かなひとときの一助となれば幸いです。

なお、ご紹介した方法は音楽の癒しの可能性を示すものであり、医療行為や医学的な治療に代わるものではありません。ご本人の体調に関しては、必ず専門の医療関係者にご相談ください。