音の癒しハンドブック

緩和ケアに役立つ:夜間の覚醒やそわそわ感を穏やかにするご家庭での音楽活用法

Tags: 音楽療法, 緩和ケア, 夜間覚醒, 落ち着きのなさ, そわそわ, 介護, 自宅ケア

夜間の覚醒やそわそわ感に寄り添う音楽の力

夜間、眠っているはずのご家族が突然目を覚ましたり、ベッドの上で落ち着きなくそわそわされたりする様子は、介護されている方にとって大変ご心配であり、また看病の大きな負担にもなり得ます。このような夜間の覚醒や落ち着きのなさは、様々な原因で起こり得ますが、ご本人も不安を感じていらっしゃるかもしれません。

医療的なケアが必要な場合も多くありますが、ご家庭でできる穏やかなアプローチとして、音楽が役立つ可能性があります。「音の癒しハンドブック」では、ご家庭での緩和ケアに音楽をどのように活用できるかをご紹介しています。今回は、特に夜間の覚醒やそわそわ感に寄り添うための音楽活用法についてお話しします。

なぜ夜間の落ち着きのなさに音楽が有効と考えられるのか

音楽は、私たちの心や体に穏やかに働きかける力を持っています。静かで心地よい音楽を聴くことは、緊張を和らげ、リラックスを促すことが知られています。

夜間に目が覚めたり、そわそわしたりする背景には、不安や孤独感、体の不快感などが関わっていることがあります。音楽は、これらの不快な感覚から注意をそらしたり、心地よい音によって安心感を与えたりすることで、心の状態を穏やかに整える手助けとなることが期待できます。

夜間のそわそわ感を穏やかにするための音楽の選び方

夜間、特に覚醒時や落ち着かない状況で聴く音楽は、日中の活動を促すようなものとは異なります。ポイントは「静けさ」と「心地よさ」です。

具体的には、モーツァルトの特定の曲(例:ピアノ協奏曲の緩徐楽章)や、サティのジムノペディのような静かなピアノ曲、あるいは特定のヒーリングミュージックアーティストの作品などが挙げられますが、まずは様々な穏やかな音楽を少しずつ試してみることが大切です。

ご家庭での具体的な音楽活用方法

特別な準備は必要ありません。ご家庭にあるスマートフォンやタブレット、CDプレイヤーなどで実践できます。

  1. 流すタイミング:
    • 夜間にご家族が覚醒され、そわそわしている際に、静かに音楽を流し始めます。
    • 夜間の覚醒が頻繁に起こる場合は、眠りについた後の早い時間帯や、覚醒しやすい時間帯の少し前から、ごく小さな音量で流し始めておくことも検討できます。
  2. 流す場所と音量:
    • 寝ている場所の近くにプレイヤーを置きます。
    • 音量は、耳を澄ませば聞こえる程度のごく小さな音にします。大きすぎるとかえって覚醒を促したり、睡眠を妨げたりすることがあります。部屋全体に響くような音量ではなく、その方の耳元にそっと届くようなイメージです。
  3. 聴き方:
    • BGMとして静かに流すのが基本です。ヘッドホンやイヤホンは、就寝中や夜間の使用には適さない場合が多いでしょう。
  4. 継続時間と自動停止:
    • 一晩中流しておく必要はありません。30分から1時間程度の短い時間でも効果を感じられることがあります。多くのプレイヤーにはタイマー機能がありますので、設定しておくと便利です。
  5. 環境との組み合わせ:
    • 音楽を流す際は、部屋の照明を落とすか、ごく薄暗い状態にしましょう。静かで落ち着いた環境を整えることが、音楽の効果を高めます。

実践上の大切なポイント

終わりに

夜間の覚醒やそわそわ感は、ご本人も介護する方もつらい時間です。音楽の静かで穏やかな響きが、少しでもその時間を和らげ、心安らぐひとときをもたらす助けとなれば幸いです。様々な音楽を試しながら、ご家族にとって最適な方法を見つけていただければと思います。