緩和ケアに役立つ：気持ちを切り替えるご家庭での音楽活用法
日常の穏やかな変化に寄り添う音楽の力
ご自宅で介護をされていると、介護される方が同じ場所で過ごされる時間が長くなり、気持ちの切り替えが難しく感じられることがあるかもしれません。単調な日々に、少しでも穏やかな変化やリフレッシュをもたらしたいとお考えの場合、音楽がそのお手伝いになることがあります。音楽は、聴く方の気分に寄り添いながら、新たな刺激や心地よさをもたらし、気持ちを上向きに、あるいは落ち着いた状態へと穏やかに導く可能性を秘めています。
この記事では、日々の暮らしの中で介護される方の気持ちを穏やかに切り替えるために、ご家庭で手軽にできる音楽の活用方法をご紹介します。特別な知識や準備は必要ありません。身近な機器と少しの工夫で、音楽の癒しの力を日々のケアに取り入れていただくことができます。
気持ちの切り替えに役立つ音楽とは
気持ちを切り替えるために選ぶ音楽は、どのようなものが良いのでしょうか。大切なのは、聴く方が心地よく感じ、心に穏やかな変化をもたらすような音楽を選ぶことです。
必ずしも「元気が出る」ようなアップテンポな曲だけが良いわけではありません。むしろ、穏やかながらも少しリズム感があったり、普段とは違う雰囲気を持っていたりする音楽が、良い刺激となることがあります。
具体的な音楽の例としては、以下のようなものが考えられます。
- 穏やかな自然音: 小鳥のさえずり、川のせせらぎ、波の音など。まるでその場にいるかのような感覚をもたらし、リフレッシュ効果が期待できます。
- 軽快すぎないインストゥルメンタル: クラシック音楽の中の小品、ヒーリングミュージック、穏やかなジャズ、ボサノヴァなど。歌詞がないことで、情報過多にならず、純粋に音の響きを楽しむことができます。
- 本人が過去に親しんだ、明るすぎない思い出の曲: かつて好きだったけれど、今はあまり聴かなくなったような、穏やかながらもポジティブな思い出と結びついた曲。ただし、感傷的になりすぎる可能性のある曲は避けた方が良い場合もあります。
- 世界の民族音楽や環境音楽: 普段聴き慣れない、穏やかな響きの音楽も、新鮮な気持ちをもたらすことがあります。
重要なのは、これらの例に固執せず、介護される方のその日の様子や好みに合わせて柔軟に選ぶことです。最初は様々な種類の音楽を少しずつ試してみて、どのような音楽に心地よさを感じるか、注意深く観察してみてください。
気持ちを切り替えるための音楽の聴かせ方・活用方法
音楽を日々のケアに取り入れる際、いくつかの簡単な工夫でより効果的に活用できます。
- 時間帯を決めてみる: 例えば、午後の休憩時間や、少し活動が落ち着いた時間帯など、「音楽タイム」を設けてみるのはいかがでしょうか。決まった時間にある程度の長さ（10分〜30分程度）流すことで、日々の生活に穏やかなリズムと変化が生まれます。
- 音量に注意する: 大きすぎる音量はかえって負担になることがあります。会話ができる程度の、心地よいと感じる控えめな音量で流しましょう。
- BGMとして自然に: 何か別の活動（休憩、軽い読書や作業、あるいはただ座っている時間など）をしながら、BGMとして音楽を流すのが最も手軽で負担が少ない方法です。音楽そのものに集中するというより、空間全体が穏やかな音で満たされるように意識します。
- 機器は身近なもので: スマートフォンやタブレット、お手持ちのCDプレイヤー、スマートスピーカーなど、今ご家庭にあるもので十分に実践できます。特別なオーディオ機器を用意する必要はありません。
- 短い時間から試す: 最初から長時間流す必要はありません。5分や10分といった短い時間から始めてみて、慣れてきたら少しずつ長くするなど、様子を見ながら調整してください。
- 音楽について話してみる: もし可能であれば、音楽を聴きながら「この曲、穏やかで良いですね」「前にも聴いたことありましたっけ？」など、簡単な声かけをしてみるのも良いでしょう。音楽をきっかけに、穏やかなコミュニケーションが生まれることもあります。
実践する上での注意点
音楽を活用する際は、いくつか気をつけていただきたい点があります。
- 本人の反応を常に観察する: 音楽を流してみて、嫌がったり、落ち着かなくなったりする様子が見られたら、すぐに止めるか別の音楽に変えましょう。無理強いは禁物です。
- 体調を考慮する: 体調が優れない時や、強い痛みがある時などは、音楽が負担になる可能性もあります。そのような時は無理に音楽を流す必要はありません。
- 環境音とのバランス: テレビがついている、他の人が騒がしいなど、周囲が騒がしい中で無理に音楽を流しても効果は期待できません。できるだけ静かで落ち着ける環境で試みるのが理想です。
まとめ
音楽は、ご家庭での緩和ケアにおいて、介護される方の気持ちに穏やかな変化をもたらすための身近で有効な手段の一つです。日々の暮らしに少し音楽を取り入れることで、単調さが和らぎ、穏やかな気分転換やリフレッシュのきっかけが生まれるかもしれません。
今回ご紹介した音楽の選び方や活用方法は、あくまで一つの例です。最も大切なのは、介護される方にとって心地よく、穏やかな気持ちになれる音楽を見つけることです。ぜひ、様々な音楽を試しながら、お二人にぴったりの音楽の活用法を見つけて、日々の生活に穏やかな彩りを加えてみてください。
※本記事でご紹介している音楽の活用方法は、医学的な治療に代わるものではありません。症状に関するご心配がある場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。