音の癒しハンドブック

緩和ケアに役立つ:穏やかな映像や景色と音で心安らぐ時間をつくるご家庭での音楽活用法

Tags: 音楽療法, 緩和ケア, 自宅介護, リラックス, 視覚と聴覚, 自然音

ご家族の介護をされている中で、少しでも穏やかな時間をつくりたい、心安らかに過ごしてほしいとお考えになることは多いでしょう。音楽は、耳から入る情報として心身に働きかけますが、視覚的な要素と組み合わせることで、さらに豊かな穏やかさにつながる可能性があります。

この方法では、心地よい音楽を聴きながら、穏やかな映像や景色を目にする時間を取り入れます。これは、五感を同時に刺激することで、注意を痛みや不快な感覚からそらし、リラックスを促すアプローチです。特別な準備は必要ありません。ご家庭にあるものや、手軽に利用できる映像などを活用できます。

なぜ映像や景色と音楽の組み合わせが良いのでしょうか

人は五感を通して周囲の情報を感知し、心身の状態を変化させています。聴覚から入る音楽は、気分や感情に直接働きかける力を持っています。これに視覚から入る穏やかな情報(景色や映像)を加えることで、脳はより多様な感覚刺激を受け取ります。

これにより、一つの感覚(例えば痛みや不安)に集中していた意識が分散されやすくなります。美しい景色や心安らぐ映像に目を向け、心地よい音楽を耳にすることで、不快な感覚から一時的に離れ、リラックスした状態に入りやすくなるのです。これは、心身の緊張を和らげ、穏やかな気持ちを取り戻す一助となります。

どのような映像・景色と音楽が良いでしょうか

このアプローチで大切なのは、「心地よさ」と「穏やかさ」です。刺激が強すぎたり、不快感を与えたりするものは避けるようにします。

<映像・景色>

<音楽>

映像や景色の雰囲気に合う音楽を選ぶと、より効果が高まります。

音楽を選ぶ際は、映像や景色の「明るさ」「動きの速さ」「色彩」などに合わせて、音楽の「テンポ」「音色」「雰囲気」を調和させると、より一層心地よさが増します。例えば、静かな森の映像には、鳥の声を含む自然音や穏やかなピアノ曲、広大な海の映像には、波の音やゆったりとしたストリングス系の音楽などが考えられます。

具体的な実践方法

  1. 環境を整える: ご本人が楽な姿勢で座ったり横になったりできる場所を選びます。窓からの景色が見える場所や、画面が見やすい位置が良いでしょう。
  2. 映像または景色を用意する: 窓の外の景色を眺める場合はそのままに。写真や絵を眺める場合は、見やすい場所に置きます。映像を流す場合は、テレビ、タブレット、スマートフォンなどの機器を用意し、穏やかな映像を選んで再生します。
  3. 音楽を用意する: 音楽プレーヤー(CD、スマートフォン、タブレットなど)を用意し、選んだ音楽を再生リストに入れます。
  4. 開始する: 穏やかな映像や景色を見ながら、音楽を流し始めます。音量は小さめのBGM程度に抑え、会話の邪魔にならないようにします。
  5. 共に過ごす: 無理に話しかける必要はありません。ご本人の様子を見ながら、静かにその時間を共有します。一緒に景色を眺めたり、音楽に耳を澄ませたりするだけでも、心安らぐ時間となります。
  6. 時間の目安: 短時間(5分〜10分程度)から始め、ご本人の様子を見て徐々に時間を長くしていきます。1日のうちで、気分の切り替えたい時や、少し落ち着いてほしい時間帯に取り入れてみるのが良いでしょう。
  7. 本人の反応を見る: 音楽や映像に対し、心地よさそうにしているか、嫌がっていないかなど、ご本人の反応を注意深く観察します。もし嫌がる様子が見られたら、すぐに中止し、別の音楽や映像を試すか、この方法が合わない可能性も考慮します。

介護の合間、ほんの数分でも良いので、この「見る+聴く」時間を取り入れることで、ご本人だけでなく、介護する方ご自身の心も穏やかになることがあります。

実践のヒント

穏やかな映像や景色と、心地よい音楽を組み合わせるこの方法は、ご家庭での時間をより豊かに、そして心安らぐものにするための一つの選択肢です。ぜひ、ご家族との穏やかな時間をつくるために、無理のない範囲で試してみてはいかがでしょうか。