緩和ケアに役立つ:通院や外出時の気分を穏やかに保つご家庭での音楽活用法
通院や外出に伴う心身の負担と音楽の可能性
通院や外出は、ご本人にとっても、また介護する方にとっても、普段とは異なる状況であり、心身に負担がかかることがあります。慣れない場所への移動、待ち時間、あるいは体調の変化など、様々な要因が不安や緊張、疲労、気分の落ち込みといった感情を引き起こす可能性があります。
このような時、音楽が穏やかな気持ちを保つための一助となる場合があります。音楽は単なる娯楽ではなく、私たちの心や身体に働きかけ、感情を調整したり、リラックスを促したりする力を持っています。特別な準備や音楽療法に関する専門知識は必要ありません。ご家庭にあるもので、通院や外出に伴う様々な不快感を少しでも和らげ、穏やかな時間を過ごすための音楽活用法をいくつかご紹介いたします。
なぜ通院・外出時に音楽が役立つのか
通院や外出の場面では、普段とは異なる音や環境に囲まれることが多くあります。病院の喧騒、街の騒音、人の話し声など、耳に心地よくない音がストレスの原因となることもあります。音楽は、こうした外部の刺激から注意をそらし、耳に心地よい音で空間を満たすことで、心を落ち着かせる効果が期待できます。
また、好きな音楽や穏やかな音楽を聴くことは、気分転換になり、緊張を和らげ、心身のリラックスを促すことにもつながります。特に、過去の楽しい思い出と結びついた音楽は、安心感や幸福感をもたらし、気分を明るくする効果が期待できます。
通院・外出時に適した音楽の選び方
通院や外出時の音楽選びでは、以下の点を考慮すると良いでしょう。
- 穏やかで心地よい音: 歌詞のない、ゆったりとしたテンポのインストゥルメンタルは、思考を邪魔せずリラックスしやすいとされています。クラシック音楽の静かな曲(例:サティのジムノペディ、ドビュッシーの月の光など)、ヒーリングミュージック、アンビエントミュージックなどが考えられます。自然音(鳥のさえずり、小川のせせらぎ、波の音など)も心身を落ち着かせる効果が期待できます。
- ご本人が好む音楽: ご本人が過去によく聴いていて、リラックスできる、あるいはポジティブな思い出と結びついているような、静かで落ち着いた曲があれば、それが最も良い選択肢となり得ます。ただし、状況によっては感情的な高まりを誘うような激しい曲や、歌詞に強いメッセージ性がある曲は、避けた方が良い場合もあります。
- 邪魔にならない音: 会話や周囲の指示を聞き取る必要がある場合もあるため、あまりに集中力を奪うような音楽や、音量の大きすぎる音楽は避けるようにします。
新しい音楽を試す場合は、まずは短い時間から試してみるのが良いでしょう。大切なのは、ご本人が「心地よい」と感じる音を選ぶことです。
具体的な音楽の活用シーンと方法
ご家庭で、あるいは外出中に、どのように音楽を取り入れることができるでしょうか。
- 出発前の準備時間: 家を出る準備をしている間、部屋に穏やかな音楽を小さく流しておきます。これから外出することへの心の準備を促し、リラックスした気持ちで家を出られるようサポートします。
- 移動中に: 車や電車などでの移動中に音楽を聴きます。周囲の騒音を和らげ、移動に伴う退屈さや不快感を紛らわせるのに役立ちます。公共の場では、周囲への配慮としてイヤホンやヘッドホンを使用するのが現実的ですが、長時間の使用や、周囲の状況を把握する必要がある場合には注意が必要です。ご本人の状態に合わせて、耳を塞がないタイプのイヤホンを選ぶ、片耳だけ使うなど工夫してください。
- 病院の待合室で: 待ち時間は特に長く感じられ、不安になりやすい時間です。イヤホン等を使って、ご本人の心地よい音楽を聴くことで、気持ちを落ち着けて待つことができます。
- 帰宅後の休憩時間: 無事帰宅した後、ほっと一息つく時間に音楽を流します。外出の疲れを癒し、心身を穏やかな状態に戻す手助けとなります。
音楽を流す機器は、スマートフォン、携帯音楽プレイヤー、CDプレイヤーなど、ご家庭にあるもので十分です。音量は大きすぎず、会話や周囲の音を完全に遮断しない程度の「BGM」として使うのがお勧めです。
実践のヒント
- 事前に準備する: 外出前に、ご本人がリラックスできる音楽を集めたプレイリストを作っておくと、いざという時に慌てずに済みます。
- 体調に合わせて選ぶ: その日のご本人の体調や気分によって、心地よく感じる音楽は変わるかもしれません。いくつかの選択肢を用意しておき、状況に応じて柔軟に変えてみてください。
- 無理強いしない: 音楽を聴くことを強制するのではなく、「音楽を聴いてみるのはどうですか?」と優しく提案し、ご本人の意思を尊重することが何よりも大切です。もし音楽を嫌がるようであれば、無理に使う必要はありません。
まとめ
通院や外出は、たとえ短時間であってもご本人にとって、また介護する方にとっても負担となることがあります。音楽は、その負担を軽減し、心穏やかな時間を過ごすための一つの有効なツールとなり得ます。今回ご紹介した方法が、ご家庭での介護における通院・外出時の緩和ケアに少しでもお役に立てれば幸いです。日々の状況に合わせて、無理のない範囲で音楽の力を活用してみてください。