音の癒しハンドブック

緩和ケアに役立つ:閉塞感や圧迫感を穏やかにするご家庭での音楽活用法

Tags: 閉塞感, 圧迫感, 音楽活用法, 緩和ケア, 自宅介護

ご家族の介護をされている皆様へ

この「音の癒しハンドブック」では、音楽が持つ力を借りて、様々な症状や状況にあるご家族の心身を少しでも穏やかに過ごしていただくための方法をご紹介しています。今回は、病状の進行や環境の変化によって感じやすくなるかもしれない、閉塞感や圧迫感を和らげるための音楽活用法についてお話しします。

閉塞感や圧迫感と音楽

長く同じ空間で過ごしたり、身体的な自由が制限されたりすると、心の中に「閉塞感」や「圧迫感」といった息苦しさや重苦しさを感じることがあります。これは誰にでも起こりうる自然な感覚ですが、ご本人にとっては大きな不快感や不安につながることがあります。

このような感覚は、言葉でうまく表現できないことも少なくありません。音楽は、言葉を使わずに心に寄り添い、感情や感覚に働きかける力を持っています。適切な音楽を選ぶことで、閉塞感を少しでも和らげ、心に広がりや安らぎをもたらす手助けとなる可能性があるのです。

閉塞感・圧迫感を穏やかにする音楽選びのヒント

閉塞感や圧迫感を感じている時に適しているとされる音楽には、いくつかの特徴があります。大切なのは、ご本人が「心地よい」「ほっとする」と感じる音を選ぶことです。

具体的には、ご本人が過去に好きだった、または懐かしく感じる音楽の中にも、穏やかな気持ちになれるものがあるかもしれません。ただし、賑やかすぎるものや、強い感情を呼び起こすものは、かえって負担になることもあるため、その時のご本人の状態に合わせて慎重に選んでみてください。

ご家庭での具体的な音楽活用法

特別な準備は必要ありません。ご家庭にあるスマートフォンやタブレット、CDプレイヤー、ポータブルスピーカーなどで手軽に試すことができます。

  1. BGMとして穏やかに流す: 部屋全体に、小さめの音量で穏やかな音楽を流します。ご本人が横になっている時や座っている時など、リラックスできる時間に試してみてください。空気清浄機や換気扇の音など、気になる環境音をマスキングする効果も期待できます。
  2. イヤホンやヘッドホンで集中して聴く(状況に応じて): もしご本人が快適に使えるようであれば、イヤホンやヘッドホンを使うことで、より音の世界に集中し、周囲の環境から一時的に離れることができます。ただし、長時間の使用や、外からの声が聞こえにくくなることでの不安感に注意が必要です。ご本人の様子を見ながら判断してください。
  3. 窓を開けて(可能であれば): もし可能であれば、窓を少し開けて外の空気を感じながら音楽を聴くのも良いでしょう。音楽による心の広がりと、実際の空間の開放感が相乗効果をもたらすことがあります。
  4. 音楽と共に軽いマッサージや手足を動かす: ゆったりとした音楽を流しながら、手足などを優しくなでる、軽くさするなど、身体的な接触を加えることも、安心感や心地よさにつながります。音楽のリズムに合わせてゆっくりと身体を動かすことも、閉塞感の軽減に役立つことがあります。

実践する際は、必ずご本人の反応をよく観察してください。「この音楽は好きですか?」「心地よいですか?」などと優しく声をかけ、嫌がるようであればすぐにやめ、別の音楽を試すか、その日は中止するなど、柔軟に対応することが大切です。

まとめ

閉塞感や圧迫感は、緩和ケアの状況では起こりやすい感覚の一つです。音楽は、この感覚を穏やかにし、心に安らぎや広がりをもたらすための一つの選択肢となり得ます。

今回ご紹介した音楽選びや活用法は、あくまで一般的なヒントです。何よりも大切なのは、ご本人が「心地よい」と感じる時間を持つことです。音楽を通じて、ご家族が少しでも穏やかで安らかな時間を過ごせるよう、無理のない範囲で試してみてください。これらの音楽活用法は、病気の診断や治療に代わるものではないことをご理解いただけますようお願いいたします。


※この情報は、緩和ケアにおける音楽活用の可能性を示すものであり、医学的な診断や治療に代わるものではありません。実践にあたっては、ご本人の状態をよく観察し、必要に応じて医療専門家にご相談ください。